朝礼での校長訓話Message
信じる力
外交官に必要な力は何かというと、英語ができるのは当たり前として、意外に思うかもしれませんが、相手を信じる力と相手に共感する力なのです。
国家的な戦略の駆け引きの場で、相手を信じる心などあっていいのかなと思いがちですが、そうでなければ良好な人間関係は築けません。
以前の話になりますが、トランプさんと安倍さんとの間には、ある種の友情のようなものがあったようで、かつてトランプさんは「晋三と自分との関係であれば真珠湾は起こらなかっただろう」といったそうですが、この話は互いに相手に共感することが大切であることを物語っていると思います。
そういう意味で、互いに良好な人間関係を築いていくためには、外交官でさえ相手を信じる力、相手に共感する力が必要になるわけです。外交官としては相手を説得する力ももちろん必要ですが、説得力というのは論理的に相手を説き伏せる力のことを言います。ディベートで勝って相手が黙っているのは、相手が納得したからではありません。反論できないから、悔しいけれども黙っているだけで、納得しているわけではないのです。納得感を相手に持ってもらうためには、相手に共感してもらうことが必要です。
長期に渡って良好な人間関係を築くためにも、相手に共感してもらい、納得してもらうことが必要です。そして、そのためには利他の気持ち、相手を思いやる気持ち、相手を想像する気持ちが大切です。
以前、世界宗教者平和会議の京都大会に出席させてもらったことがあります。そのときに非常に印象深かった出来事がありました。それは、たとえばイスラム教の指導者とユダヤ教の指導者が口角泡を飛ばして論争する場面でも、相手が話し終わるまでは途中で口を挟まないんですね。まったく対立する立場の相手に対して、相当厳しいことを言うけれども、相手が話し終わるまでは待ってから話し始める。そういうマナー、姿勢が相手に納得してもらうことにつながるのです。その態度は非常に立派だなと感心した記憶があります。
相手に共感してもらうためには相手の話を聞いたうえで、自分の考えを示すこと。それが暴力ではなく、話し合いで問題を解決していくことにつながるのです。
日本は平和主義、武器で闘うのではなく、話し合いで問題を解決し、物事を前に進めていこうという考えの国です。戦争の反対は平和ではありません。戦争の反対は話し合いです。その意味でも相手が納得できるような共感力、相手を信じる心を持つことが大切です。
君たちにおいても、友だちと話をするときはもちろん、苦手な人、嫌な人と話をするときに相手を思いやり、相手を信じる心をもつことで、さまざまに改善できることがあると思います。そういったことを常日ごろから意識することが、一人一人の人間性を高めていくことにつながると思います。