食堂開設にあたって
Introduction

Food and Education
教育理念と食への取り組み

食物の根源目的に立ち返る

 農業に限らず、物事には根源に眠る本来の目的というものがある。車であれば早く楽に移動することが本来の目的であろう。様々な欲望が飛び交う現代社会において、時代の流行や最先端技術に目がくらみこの本来の目的を見失いがちである。この本来の目的を現代ではなかなかとらえ難くなっている。仮に今これを根源目的と名付けるとする。

 すべての物事の根源目的はいつの時代にあろうと、いかなる場所、条件下であろうと変わることはない。食物の根源目的は栄養を摂り免疫力を上げ、丈夫な身体を形成することである。

チュニジアの自然栽培オリーヴ畑

「農薬ネオニコチノイド」という言葉をご存知でしょうか。

 ネオニコチノイドは発売当初、奇跡の農薬と持て囃され、「害虫は駆除できるが人体には全く影響が無い」との触れ込みで農家はこぞってこの新農薬を散布した。いや現在もしている。がしかし・・・ミツバチの大量死をきっかけに人体に何らかの影響を与えているのではないかという仮説が浮上。昨今の研究結果を踏まえ、ネオニコチノイドは人間への神経毒性があるのではないかと懸念され始めている。ヨーロッパ列国ではネオニコチノイドの使用は禁止されており、日本だけがこの10年で使用量を三倍に増加させている。
(水野玲子「新農薬ネオニコチノイドが日本を脅かすもうひとつの安全神話」七つ森書館)
親御さんが安心して任せていただけるような食堂を造ろうと強く心に決めた。

Natural farming for the future
自然栽培と未来社会の創造

子どもの未来を創る食物とは

 慣行栽培と自然栽培の決定的な違いは、農薬や化学肥料を使うか否かにある。慣行栽培では収穫高と味・見た目にこだわり、本来の食物として重要視しなくてはならない栄養価や免疫力ということは二の次にされる。農家と云えども食べていかなくてはならない。効率が良く費用対効果が高い方にその軸足が置かれるのは致し方ない。しかしながら、こういった食物を口にする子供たちの未来には不安が拭えない。栄養価が低く、免疫力の低い食物で未来ある子供の体を形成していくのである。もちろんその中に脳も心臓も含まれる。人間の体は頭の先からつま先まで食べ物でできているのだから、栄養価や免疫力を度外視して、利益のみを追求した食べ物で作られた体が向かう行き先が明るいものであるはずがない。

自然エネルギーを身体いっぱいに吸収できる自然栽培米

 他方、自然栽培は全くその逆である。しかし費用対効果は慣行栽培のそれとは比較にならない。取れ高も悪ければ費やされる労力と費用は慣行栽培の数倍、数十倍と云われる。けれども、採算を度外視したこの自然栽培が生み出す穀物野菜は、軸足を本来の食物が理想として持つべき栄養価と免疫力にしっかり置かれている。自然の流れの中に栽培を見出し、必要なものは引かず不必要なものは与えない。与えられた自然環境に耐えられない稲は淘汰され、害虫、野鳥、その他の多くの自然災害に自らの力で打ち勝った稲だけが画像のように折れ曲がるぐらいに、たわわに穂を実らせる。淘汰された稲の残骸さえも栄養分に変わり、与えられた自然環境から得る全てのエネルギーを稲穂に結集させるのである。そしてその栄養・免疫力の塊を食べることによって子供たちの身体は健全に形成される。